平和が一番。
快晴の青空にうみねこがたくさん飛んでいる。日差しも程好く暖かく、まるでうららかな春といったような気候だ。潮風が緩く吹いて、甲板の上にいる人々に涼しさをもたらした。
しかし、すがすがしい朝の雰囲気をぶち壊すように、珍しく修羅が口を開いた。
「こういう日は思い出す」
「何を?」
珍しい切り出し方に、なつめは眉をひそめた。なつめの切り返しに持っていた料理酒をコップに注ぎながら、げっそりとした表情で告げる。
「……昔の、胸糞悪い出来事だよ」
「……へぇ、そんな出来事、修羅でも体験してたんだね」
料理酒を奪い取りながら、感心したようになつめが返す。奪い取られた料理酒に不満を表しながら、コップに口をつけ、酒を飲み干す修羅。なつめが飲みすぎだと咎めたが、修羅はそんな事を気にしないらしい。珍しく愚痴る彼になつめは、なんだかバーテンになった気分である。
ジャックや太郎はまだこの場に姿を現していない。話は続く。
「十年位前の話だ」
「十年かー、私その頃六歳くらいよねー。ねぇ、修羅って年いくつ?」
話の内容とは関係ないところに関心を寄せるなつめ。修羅は素直に答える。
「二十五」
「うっそ、おっさーん!」
本当の年を知り驚くなつめ。もうちょっと若いのかと思っていた。素直な感想に、不機嫌そうに修羅が彼女を睨みつける。
「おま、殴る」
「ちょ、暴力反対ぃー!」
抗議するなつめを他所に彼女の頭をがっしりとつかんで、修羅は額にデコピンをした。抜刀しないだけましである。というか、そんな気力も彼にはないようだ。珍しいな、と本気でなつめが思っているとジャックと太郎が同時に甲板に現われた。
太郎は今だ寝惚け眼であるが、ジャックの方はすっきりとした顔で現われる。修羅がジャックが現われた途端にものすごく嫌な顔をしたが、なつめはそこは見ていなかった。
「おはよう」
「おはよう、なつめちゃん、修羅! 今日も爽やかに麗しく強奪日和だよ」
「……強奪なんかしたことないくせによくいうな」
欠伸をかみ殺しながら告げる太郎にジャックが反論する。
「もう、そんなことないってば! 俺たち海賊だよ! 強奪の一つや二つや三つや四つ、したことぐらいあるよ」
胸を張って告げるジャックに呆れたような口調で修羅が付け加える。
「主に、女子供を攫ってるんだろ」
「ちょ、何でしってんの、修羅博士」
驚いたのはジャックだけでなく、なつめもだ。さらに呆れたように修羅が答えた。
「俺は一応、お前達を退治しにきたんだから、お前達の行動くらい知っていて当然だろう」
「……そんな設定忘れてたみたいな顔するなよお前達」
太郎が突っ込んだとおり、ジャックもなつめもそんなことすっかり忘れていた。話題をそらして修羅が尋ねる。
「そういや、何でお前は宝じゃなくて人を攫うんだ?」
別に興味もないが聞いて見たい問いではあったので修羅は聞いてみただけだ。
ジャックは修羅の問いに困ったように笑って、最初に他の人には内緒にしてくれると嬉しいなと笑った。もちろん、内緒にするつもりなど修羅にはないが。
「昔、アラギに行ったときに女の子に会ったんだ。綺麗な、黒髪の、赤い瞳の女の子」
黒髪、赤い瞳、といわれて太郎は自然に修羅を見た。修羅はとても不機嫌そうな顔をしていた。ジャックはくすぐったそうに続ける。
「その子が言ってたんだ。人の一番の宝は人だって。だからかなぁ? よく攫うの」
「人以外も攫うでしょう、貴方は」
くすくす、と話を聞いていたらしいマグロが笑った。
「放って置けないだけですよ、頭は」
「海賊じゃなくて、国に使えればよかったかもね」
メノウとサンゴがそう続けた。ジャックは困ったように頭をかいた。
「……俺は国に仕えるつもりはないけど」
「知ってますよ」
マグロは苦笑して、メノウとサンゴと共に姿を消した。ジャックはまいったなぁと笑う。太郎が告げた。
「お前があの三人に勝てる日なんて一生来ないだろうな」
楽しそうに告げる太郎は頭がすっきりしたのか清々しい表情をしている。なつめが急に思いついたようにジャックに囁いた。
「ねぇ、話は変わるけど、その黒髪の女の子ってジャックの初恋の人?」
尋ねると、珍しくジャックが頬を染めた。
「そん、え、ち、違う、よ?」
「説得力ないぞ、お前」
珍しく色恋の事で動揺している様子のジャックに太郎は面白そうにからかった。
しかし、一人、修羅は不機嫌そうに赤い瞳でジャックを見て、とても不快な表情でため息をついたのだった。
「平和ボケどもが」
快晴はそんな修羅のふてくされた気分などお構いなしに綺麗だった。
END
10000hitありがとうございました!
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(本文ここまで)
亜幸宅が10000hitということで、フリー小説を強奪してきまし た(うわぁ
平和が一番ですよね!笑 ロンリィスタァの皆さんがすごい大好きなので、仲が良くて(若干一人違う気もしますが)(あれっ)、癒されます!
素敵な小説ありがとうございました。
そして、10000hit、本当におめでとうございます。
此方からの小説のお持ち帰りはお止めください。
亜幸宅 nobody